板前自身の衛生管理は基本中の基本
調理する人自身が清潔的でないと、その人から、食品に細菌が移ってしまうことがある。
これを防ぐために、調理器具やつけ場の衛生と同様、まず自分の衛生管理を徹底する。
・手洗いは、衛生管理の中で最も効果を発揮する。
手を清潔にして調理に望むことは、衛生管理の上で最も大切なことである。
わかってはいるが、ついつい仕事に追われていたり、面倒なとき、またそれほど汚れていないからと、省いてしまいがちである。しかし、これを怠ると、自分自身が菌の媒体となり、食中毒を引き起こすことになりかねない。
板前の人なら、手洗いも仕事のうちという自覚を持ちたいものである。
・調理に入る前には、必ず時計や指輪をはずす
指輪や時計を付けた皮膚の表面には、たくさんの菌が隠れているもの。この雑菌を調理している食品につけないためには、これらをはずしてから調理をすることも当然と言える。
手洗いの際には、指輪があたっていた指と指の間、時計のあたっていた手首の内側を菌が好んで付着するので、特によく洗うことを心がけたい。
・爪の間の垢は、爪ブラシを使って洗う
爪と爪の間の垢にも気をつけなければならない。
この爪垢が不衛生なものである。爪ブラシを使い、爪ブラシの間の垢をかき出すように、よくこすり洗いをする。
・手の先ではなく腕まで洗う
手洗いはついつい指、手のひら、手の甲、せいぜい手首までの範囲でしか行わないことが多い。しかし、調理をするとき、水につけて食材の洗物をすることは多い。
こう考えると調理は手先だけの作業ではない。
腕は特に何も触っていないから汚れていないと思い易いが、汗などに菌が含まれているので、腕は綺麗だとは言い難い。場合によっては手だけではなく、腕まで洗うとよい。
・石鹸で洗った後、さらに消毒をすると効果的
石鹸で洗っただけの手洗いでは、手のひらに残る細菌の数を考えると、十分であるとは言い難い。
さらに安全性を考え、手洗いをした後、殺菌性の強い逆性石鹸を使って洗うか、消毒液に手をつけたりして、菌を殺すようにしたい。
殺菌した後は、もう一度水洗いをし、石鹸や消毒剤石鹸を落とすことも忘れずに。
・扱っている食品を変えた時にも手洗いする。
すしを握っていたが、途中に料理の注文が入った、巻物を巻いていたところ、魚のさく取りを頼まれたなどと、つけ場の中で調理をしている途中に、別の調理に携わらなくてはならなくなったとき、衛生的に手を洗うと効果的である。
調理をし、食材に触っているときの手というのは、意外と汚いものである。そのまま別の料理を始めるのは感心できない。
また素材により持つ雑菌の種類が違うので、携わる料理が変わるごとに手を洗うのが望ましい。
・白衣はできるだけ毎日洗った清潔なものを着用。
白衣は、つけ場に外の菌を持ち込まず、区別するために着るものである。つけ場に入るときはきちんと白衣を着用したい。
白衣の清潔さは客の目にも店の衛生管理に対する姿勢が読み取れるものである。
良い印象を与えるためにも清潔なものを着用したい。
また自分自身の気持ちも引き締める。
・調理中には頭や顔に手をやらないようにする
くせでつい頭や顔に手をやる人は多いものである・
だが、調理をしているとき、この癖だけは気をつけなくてはならない。
顔も汚れているが、髪の毛は特に汚いものである。
せっかく手を洗っても髪をいじっては意味がない。無意識の行動であるが気をつけたい。
また、髪は一本でも料理に入ったら店の信用を落とすことになる。
短く切り、きちんとまとめて、髪が落ちてこないようにする。